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CG MAKING

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デスノート Light up the NEW world

2016年10月劇場公開作品【VFX制作】

INTRODUCTION

死神リュークの
10年前とは異なる、新しい映像表現へ

2006年に公開され、大ブームを巻き起こした映画『デスノート』『デスノート the Last name』2部作。その10年後を描く新章『デスノート Light up the NEW world』がついにベールを脱ぐ。
あれからもう10年も経ったのか……と感じる人が多いのではないだろうか。「名前を書くだけで人を死なせることができる死神のノートを手に入れたらどうする?」という『デスノート』の問いかけは、ネット監視社会や対テロ社会といった「不確かな正義」の時代の中で少しも古びていない。原作コミックから実写映画、TVアニメ、TVドラマ、舞台、ゲームと様々な形へ展開し、現在進行形のコンテンツとして生き続けている。もちろん核になるのは累計3000万部を誇る原作コミックのオリジナルな魅力にあることは言うまでもないが、より幅広い層へ支持を広げたのは映画版の成功だった。従来の日本映画の枠を超えるエンターテインメントとして、現在の邦画のあり方に多大な影響を与えてきた。

(テキスト:黒住 光)

10年の時を経て、実写的にリアルな表現を追求

10年という確かな時の流れを感じさせるのは、新作『デスノート Light up the NEW world』では東出昌大、池松壮亮、菅田将暉という新世代の俳優たちが新たな世界を担っていること。そして、CGの進化だ。CGで作られた死神たちが生身の役者と絡んで対等に演技するというのは、10年前には冒険的な試みだった。しかし、この10年のCG技術の進化はめざましく、今では映画の様々な場面にCGが活用され、観客の見る目も肥えている。
「10年前と同じとは思われたくない、というのがまずありましたね。10年前と今回で最も大きく違うのは、監督が佐藤信介さんになったことで、『デスノート』の世界観も佐藤信介版として新たに構築して、死神リュークのイメージも変えたいということから始まりました」と、前作と新作の双方に携わったCGプロデューサー鈴木伸広さんは語る。
前作のリュークは原作者・小畑建氏の絵からそのまま起こしたキャラクターデザインでCG化されている。夜神月役の藤原竜也、L役の松山ケンイチら俳優の役作りも原作を意識し、マンガ的な世界観で作品が統一されていた。それが斬新な映画のイメージを生んだのではあったが、新作はより実写映画的にリアルな表現を追求している。

  • 10年前の映画版のリューク
  • 今作のリューク

鈴木

リアルにということで、リュークの皮膚の質感も細かい産毛が生えていたり、皺もモデリングで作っていたり、10年前にはできなかった表現になっています。フェイシャルキャプチャーを導入して、リュークの表情の動きも中村獅童さんの演技と完全にシンクロしていることも大きいですね。10年前はすべて手付けで、アニメーターの手作業で顔は動かしていましたから。ライティングの技術も進歩して、撮影現場とまったく同じ照明がCGキャラにも当っていますから、死神の実在感は格段に上がったと思います。

フェイシャルキャプチャーとは、演技する俳優の顔を撮影して、その表情の変化をデータとして取り込む技術。顔面に多数のマーカー(小さなポイント)を付けて撮影する様子がよく知られているが、最近では普通に撮影した映像そのものから表情を読み込む技術が発達し、マーカー方式では不可能だった目の動きまで生のデータを取り込めるようになっている。アップにも十分耐える死神の演技は、生身の役者と共存していてもまったく違和感がない。ハリウッド映画を見ても、CGキャラと言えば動物や仮面のヒーロー、エイリアン的なクリーチャーといったところが多く、人間に近い表情のCGキャラクターが会話劇で本格的に芝居する例は今でも少ない。ドラマに自然に溶け込んでいる本作の死神たちは、CGであることを忘れさせてくれる。

  • マーカー方式のフェイシャル・キャプチャー
  • ヘッドマウント・カメラ方式のフェイシャル・キャプチャー

鈴木

当初、監督はCGと実際の造形物の併用を考えていて、腕や肩だけが映るようなカットでは着ぐるみや人形を使うつもりだったようです。結果的に、全部CGでやれるということを監督に納得してもらえることができたのがよかったです。

死神リュークのリ・イマジネーション。

そうした技術面の進化だけでなく、死神リュークの造形はデザイン的にもリニューアルされた。リアル志向のコンセプトに沿って、原作よりもダークなイメージのビジュアルになっている。今回の映画は原作にはない完全オリジナルストーリーであり、ビジュアル的にも全く新たに作り直そうということで、前作にはなかったコンセプト・アートを作成するプロセスから始められた。
コンセプト・アートを担当したのは高津絵里さん。美大を卒業後、フリーランスでゲーム関係の背景画やキャラクター画を描いたりといった仕事をしてきて、3DCGや映画の経験はなかった。しかし、その作画の腕とセンスを見込まれ、デジタル・フロンティアに入社して半年での大抜擢だった。

高津

この業界の知識もなくて、キャラクターのリメイクというのが何たるかも分かっていないまま進めていました。最初は10年前のリュークのデザインのまま、肌の質感や服の質感をただクオリティアップしただけのものを出してしまって、CGプロデューサーの豊嶋(勇作)さんから『原作や前作のリュークは完全に忘れてしまっていいから、自由なイメージで死神を描いてほしい』と言われたんです。それで、本当に自由な感じで3パターン描いたのがこれです。若干リュークのイメージを残しつつも、頭がツルツルだったり、心臓見えてたり、死神なのに天使の輪っかがあったり……。あまりに自由すぎたのか、豊嶋さんに見せた時、反応が微妙だったんですけど(笑)

  • リュークの初期のコンセプト・アート パターン1
  • リュークの初期のコンセプト・アート パターン2
  • リュークの初期のコンセプト・アート パターン3

しかし、それこそ豊嶋プロデューサーの求めていたものだった。もちろん、そのまま本編に使用できるデザインではなかったが、前作のイメージを一旦完全に断ち切ることによって、新作のための再創造に生命が芽生えたのだ。高津さんの自由な発想を土台にして、そこへリューク本来のイメージを少しずつ戻していく形でコンセプトは調整されていった。

高津

アゴの形状とか筋肉の張り感とか、リュークらしさの特徴は後で豊嶋さんから指示されました。リュークに対する既成概念はとても強かったので、一度自由に描いてみて、ふっきれたところはあります。従来のリュークは、見た目は不気味だけどキャラクター的には飄々としたところがあって、つかみどころのないようなイメージだったんですが、今回の映画はシリアス目なキャラになるということだったので、デザインもダークというか、シリアスな方向で詰めていきました。

アメコミ映画でも、キャラクターデザインはよりダークなイメージへという潮流がある。例えばバットマンのスーツも、60年代のTVドラマ版のポップでキッチュなイメージから、90年代のティム・バートン監督によるシリーズでダークなデザインに一新し、さらに『ダークナイト』シリーズではよりリアルで甘さを抑えたイメージへと、時代とともに変貌してきた。本来は健全で優等生的イメージだったはずのスーパーマンでさえ、今は色調の暗いスーツで苦悩のヒーローを演じている。それは世界的な政治経済状況の暗さの反映でもあるだろうが、そもそも時代を超えて生き続けるマンガのキャラクターが読者とともに成長するためには、次第にシリアス化していかなければならない宿命なのかもしれない。リュークも10年を経てより悪魔的に、生々しい存在感とスタイリッシュなイメージを両立させたルックスに生まれ変わった。

© 大場つぐみ・小畑健/集英社 © 2006「DEATH NOTE」FILM PARTNERS 監督:金子修介
© 大場つぐみ・小畑健/集英社 © 2016「DEATH NOTE」FILM PARTNERS 監督:佐藤信介