CG MAKING
2009年8月劇場公開作品【CG制作】
制作過程のポイントは綿密なコミュニケーション
最初は絵コンテを基にどの部分を3DCGにするのか、どのようなイメージなのかをお聞きしましたね。私からも、作るに当たって、聞いておきたいことなどをなるべくたくさんお聞きしました。例えば、OZの世界の雰囲気とか、アバターのイメージとか。そこから、監督の作品への思いが伝わってきました。 カットごとにレイアウトと動きを作っていきますが、どのカットもカメラワークとレイアウトが決まるまでは、ずいぶんやりとりがありました。細田監督は必ず電話で話をしてくれました。「直接話をしないと伝わらない」とおっしゃっていただいたところがとても共感できました。
堀部さんと仕事をしていて、まず勘が恐ろしくすばらしいと思いました。最初の段階では、絵コンテには、あまり詳しいことは書いていませんが、例えば「ゴゴゴゴ・・・」といった手書きの字から雰囲気を読み取ってくれる感じがします。読み取る能力のすごさを、いろいろなところで感じました。そうした思いを映像で表現するためのさまざまなアイデアが詰まっているカットがたくさんあります。
映画をつくる作業は大量にあって、いちいちすりあわせに時間がかかっていると、最終的に到達する場所が限られてしまうのですが、堀部さんは、最初の簡単なやりとりですごく近いところに行ける。ゴルフで言えば、一打目でピンのそばに落としてくれるという感じです。おかげで、どんどんイメージを近づけていける。
フルCG映画の課題
今回のサマーウォーズのように映画の中で、3分の1もCGがからむのは、なかなかないと思います。バーチャル空間を扱うという、題材ならではのものですね。フルCGぐらいでないと、これだけCGを扱う映画はないです。監督は、フルCGの映画をがっつりやるという考えはないのですか。
やりたいですね。もともと、10年前からCG制作には携わっていますので関心はあります。当時、新人の演出になったころで、CGの演出は誰もやっていないから、若手が良いのではという判断から、新人ならではの強みでやらせてもらいましたが、それが良い経験になっています。
アニメの世界は、長い年月の間にたくさんの作品がつくられてきた中で、いろいろな表現が試みられ、それが観客に受け入れられるものが、記号として残ってきている。CGも、リミッテッド・アニメーションの制作とおなじように、制約をどう逆手にとって面白くできるかを考えないといけないでしょう。お客さんとの記号のやりとりをどうするかというのは、さまざまな制約条件の中で、戦略的に考えていかないといけない。でも、逆に、なんでも失敗をおそれずにどん欲にやってみて、次々と作る方が歴史を切り開く可能性があるような気もします。日本のアニメーションも、無茶なチャレンジの蓄積があるからだと思います。多様なチャレンジがさまざまにある状況のほうが、最終的なゴールが近いような気がしますね。
記号の共有化
CGアニメーションは、立体視も含め、今とても盛り上がっています。世界のアニメーションの状況は、すでにCGアニメーションが席巻していると言ってもいいでしょう。海外の映画祭にいくと、「おまえはなんで手書きでやっているのだ。なんでCGでやらないんだ」とよく言われます。
これから立体視の映画が果たしてどれだけ一般化するかはまだ、はじまったばかりでわかりませんが、世界的な潮流からいって、CGの記号の共有が進んでいる中で、日本は遅れているのではないでしょうか。立体視映画のためには、CGは不可欠です。5年後、10年後にCGでつくるのがあたりまえになるかもしれません。そんな中で、日本でCG映画をつくろうという明確なものを持っているのは、デジタル・フロンティアだけです。映画産業のこれからの推移・発展の中で、日本においても3DCG映画をやっていくことは、未来につなげていく大きな課題だと思います。
細田監督がおっしゃるように、CG作品はまだ歴史が浅く、どちらかというとニッチな分野にテーマを絞っている傾向があります。
CG映画に必要なのは、技術の問題よりも内容がおもしろいかどうかということかもしれません。現状では、内容よりもまだ「CG表現がすごい」、ということが話題になる段階ですよね。CGが一般の人に受け入れられるかどうかは、おもしろいものを作り続けることでしょう。おもしろい映画をつくるのに、技術は不可欠ですが、技術が満たされれば面白いかというと、それは違う。逆に言えば、CGは今、技術が先行しすぎているのかもしれません。CGならではの演出や、CGならではのストーリーを専門に考える必要があり、ゲームや実写映画と同じように考えていては、CGが生かせないのではないでしょうか。
細田
最初のうち合わせの段階で、かなり詳細にイメージについて話しましたね。絵コンテにずいぶん書き込みをしていたよね。