CG MAKING
2015年7月劇場公開作品【CG制作】
さまざまなモブシーンでの視覚映像表現技術
バケモノのモブ生成では、モブの設定としてバケモノキャラのデザイン画をスタジオ地図側から提供してもらい、それを基にモブキャラとして増やしていった。制作が進むにつれ、当初見込んでいたボリュームよりもCGモブが必要とされる場面は増えていったという。
手置きはモーションビルダーで行っています。モーションビルダーでは、男女の2パターンのみ用意し、置いた後に開発チームのツールを使って、キャラのバリエーションを変えています。しりもちをつくキャラも絵コンテにありましたので、それも再現しました。それでこのカットのモブは最終的に326体となって(テーブル周りのスタッフからどよめきの声)、手置きとしては一番、数が多いシーンになってしまいました。 アニメーター リード 今辻勇人
自分のほうも割と佳境になっている時にこの作業をアニメーションチームに任せたので、モーションキャプチャのチェックにも時間が割けず、ほぼチームにお任せで作業を進めてもらいました。それが一週間後に出来上っていたので、非常に驚いたという。内輪での話ですが。
スタジアムでのモブシーン
闘技場でのモブは、背景チームとアニメーションチームとの連携が必要なフローである。
作画レイアウトのパース感に合わせる為に観客席の変形は必要だろうと予測していたので、チームには、(レイアウトが合わないので)一個のモデルではダメだから、そして観客も一緒に再配置しないとダメだからお願いね、と頼んでいました。
闘技場の試合のシーンでは作画のメインキャラの動きに合わせてモブを動かします。実際にセルがくれば、それを入れて分かりやすくした状態で作業を続けるんですが、闘技場内ではモブの手前に作画のキャラが来て、動きを作り込んでも背景と交わって結局デフォーカスされてしまいますので、少々手間をかけすぎたカットもありました。全部配置すると4万体の規模になりますが、こちらでは最大で2万体ほどを配置しました。配置はMiarmyで施しているので比較的簡単ですが、レンダリングを一回行ったあと、キャラクター自身や動きが重なる部分があるので、それをまず目視で探していく作業が入ります。座っているモブはMiarmyで処理をし、通路を歩いているキャラや一番手前にいるキャラ達に関して、動きが特殊なところは手置きで行っています。
大体の配置は背景チーム側が決定していて、後はそれをカットごとに読み込んで微妙に調整してもらうという方法をとりました。作画のレイアウトなので背景が変形するところがあって、配置したものが使えない場合が出てきます。きれいな円形であれば簡単に出来るのですが、変形した場合は手動でざっくり配置してから調整し直しています。
レイアウト(設計図)によっては、観客席をちょっとこう引き延ばしたような3Dモデルにしたりしています。 そうするとモブの並べ方を変えてあげないと合わないので、それを手動でやっているというわけです。ただ完全な手動でもなくて、ポリゴンを参考に大体このあたりに置くというツールを開発し、それを使ってある程度は手動でなくても置けるようにしました。でも重なってしまうことが発生するので、細かい調整はやっぱり手動でやらないといけませんでした。
被っている部分については、全く同じタイミングで同じ動きをする集合が出てきたりしたので、それらを改めて再生しなおして動きを変えたり、場所を移動させたりとか、手間暇をかけています。じっくり見ると判ってしまうんですよ、同じ動きが。なので、いい感じになるまで調整しました。最終的には背景としてピンボケになるので、そこまで厳しくチェックしなくてもいいかな、と思いつつも力が入っていましたね。やっていると、どんどん見えてきて気になって直していくのですが、ただ時間が(苦笑)。なにせ物量がかなりあったので、そのあたりの加減というか、見切りをつけるのにも気を使いました。
最初は全部のモブを同じ調子で動かしていましたが、観客の動きがすこしうるさく感じる場合もあったので途中からは、手前はよく動作させて遠目の動きは抑えていくという方向にしました。メインは作画なので、どのくらいCGのほうを動かしたらいいのか、目立たせていいのかとか、その加減の調整は悩んだところでもあります。このぐらい動いても邪魔にならないかな、動かしすぎて邪魔にならないかなとかを、最初のほうは悩んでいましたね。作画を引き立てるのが役目ですから。
“ランプモブ”は作画かと思うほどの見栄え
セットアップの仕事は「基本的には中継ぎの役目」と言うが、最適なデータを次のチームへ受け渡す重要なポジションである。キャラクターチームから仕上がったパーツにウェイトを入れ、組み合わせた時に問題なく動作するかをチェックしながら作り上げていく。
突発的にでてくる要望にも確実に応えていくのが僕らの仕事です。今回はプロジェクトを始める前に各関連チームと話し合いの時間をきっちり設けて、こういうワークフローにしようと共有し合いました。そんなこともあって、今回の作業中ではそれほどアニメーションチームにも負担をかけずに済んだのではないかと思います。例えば、アクションが激しすぎるとアニメーションの直しが多く出てきてしまいます。シミュレーションでやってしまうと幾度もやり直しが発生するので、ここは手付けで、キーフレームでアニメーションをつけていきました。 リギング リード 田淵玲児
今までは1キャラクターごとにセットアップする形でしたが、今回はセットアップした後のほうが長く関わった感があります。セットアップしてから、それがきちんとレンダリングされるまで見届けました。TDチームが細かな作業はしてくれますが、デザイン対応とかで問題が出てくると、解決するのはこちらでも対応していました。例えば、レンダリングができないよ、とかいうとパーツの問題を検出するなど、セットアップというよりプチTD的な要素がありましたね(笑)。 リギング リード 田中寛隆
どの細田作品に必ず出てくる玉のれん。今回もCGでと、監督が決めていた。多々良(2D)と絡むため、多々良のコリジョンモデルを作り、玉のれんの動きをシミュレートし、その後手付けで調整を加えていった。
アニメーションチームが作ったアニメーションに1コマずつモデリングをしながら合わせて作り上げた、監督からもこだわりの注文が多かったカット。
どの細田作品に必ず出てくる玉のれん。今回もCGでと、監督が決めていた。多々良(2D)と絡むため、多々良のコリジョンモデルを作り、玉のれんの動きをシミュレートし、その後手付けで調整を加えていった。
アニメーションチームが作ったアニメーションに1コマずつモデリングをしながら合わせて作り上げた、監督からもこだわりの注文が多かったカット。
チームの思い出になったカットは、という質問にランプモブという答えが返ってきた。渋天街に迷い込んだ直後のシーンで、ランプを持ったバケモノが歩く夜の広場に低い位置からカメラが入っていく。チーム全体の力量が引き出されたシーンである。
次の日に使うから、急遽ランプモブのセットアップをしろと言われたんです。急いで作って出したら、すぐに亀川さんがアニメーションをつけてくれて。上がってきたアニメーションを見て、雰囲気がすごくいい! って、めっちゃ感動しました(笑)。
ランプモブは作画かと思うほどの仕上がりです。基本はMCベースなのですが、このランプを持っているキャラクターは、より精度を上げて作っています。カメラに近づいてきた時にコマを落としているとカクつくので、フルコマ(24fps)でつけています。奥のモブはMassiveで生成していますが、残りは全て手置きです。広場の広さ感は、モブを置いてみながら作りこんでいきました。
このランプでも、こことここを動くようにしましょう、という打ち合わせのもと、ちゃんと骨をいれて揺れるように作りこんでいます。腰についているランプのヒモがあるんですけど、これも拘って、歩くのに合わせて揺れます。 このぶらさがっているヒモのシミュレーションもあり、大量のMassive、アニメーションがすごく良い、合成クオリティも良い、で、皆の合わせ技が揃った、仕上がりの達成感があるシーンとなりました。
渋谷の高架下での車の衝突シーンも、印象に残っています。最後でサイドミラーが外れるようにしたりとか、ドアが開いて人が逃げるようにしたりとか、そういう指示があったので、それができるようにセットアップしました。でもドアを開けたら中身がなかった(苦笑)。そこで中身を作ったりもしました。ただちょっとやりすぎたと後から言われたりして(笑)。車が持ち上がるので、タイヤが落ちるようにも仕込みました。 リギング リード 神田 遼
亀川
熊徹と猪王山が外ですもうをして群衆がはけていくというシーン。元々は手描きでモブをやるという話だったのですが、最終的にCGですよね、ということで話が進んでいて(苦笑)。手置きで一からこの人数にモーションをつけていくのは無茶な話だったので、スタッフを5人かき集めて、モーションキャプチャスタジオで演技してもらい、いろいろなモーションデータをとって、それを配置するということを行いました。撮ったのは全部で8ブロック分ですかね。AからHの番号付けをした動きのファイルを作りました。 アニメーター リード 亀川武志